覚醒剤が体内時計を乱す過程を可視化する

中屋さんと若松さんの論文がBBRに掲載されました。

覚醒剤メタンフェタミン(ヒロポン)は一度投与すると生体に対する効果は一生死ぬまで残るといわれています。長期間摂取(投与)においてドーパミン関連でパーキンソン病では、同量の薬物を飲んでいても薬物の効果の減弱が起こるのに対して、覚醒剤は逆の効果がでてくるため治療は難しい。地球上の明暗周期を模倣した12時間ライトオン、12時間ライトオフの明暗条件下でマウスに覚醒剤を長期飲水投与すると、徐々に日々の明暗サイクルに体のリズムが合わなくなり、生体内の各組織がバラバラに動き出す生体リズムの乱れが誘発されます。少なくとも脳内に2つの人格があらわるかのような脳の神経組織が2分割され、働きだします。生体リズムの乱れは、睡眠障害、糖尿病、乳がん、不妊症などさまざまなリズム疾患の危険因子として作用するため発症機構解明は重要です。覚醒剤の体内時計に対する作用の研究で、大きな壁は覚醒剤が脳のどの部位に最初に作用するか(作用点:最重要部位)、作用後脳内に神経ネッワークを新規に形成するのか、あるいは他の作用機構が存在するのか不明な点にあります。さらに覚醒剤は生体リズムを主に制御している体内時計中枢:視交叉上核(SCN) が体全身の各組織のリズムを統括制御している機構を乗っ取り、睡眠覚醒行動リズムなどを支配してしまいます。本研究では、まず覚醒剤が生体リズムに作用していく過程を可視化するシステム構築をおこないました。このことで覚醒剤の生体リズムに対する作用機構を進めていく実験系が確立したと思われます。また覚醒剤の 逆耐性 形成機構を解明できると期待できます。

2年ほど前から学会で話しているところがメインです。覚醒剤メタンフェタミンに関する論文をこれからバンバンだしていければと思います。

Nakaya M, Wakamatsu M, Motegi H, Ami Tanaka A, Sutherland K, Ishikawa M, Ozaki M, Shirato H, Hamada K, Hamada T*(*Correspondence).

A real-time measurement system for gene expression rhythms for  from deep tissues of freely moving mice under light-dark conditions

Biochemistry and Biophysics Reports, 32, 101344, 2022.

Hamada Lab.

Why do we become more susceptible to disease and disability as we age? 体内時計研究  Department of Pharmaceutical Sciences International University of Health and Welfare (IUHW) Tochigi, 324-801, Japan